耳あか

ご家庭で行う耳掃除はケガなどのトラブルを起こすことがあります。特に小さいお子さんは耳掃除によって耳あかが押し込まれていたり、外耳道や鼓膜を傷つけてしまうことがあります。また年配の方の難聴の原因が耳あかであることも少なくありません。
耳鼻咽喉科で2-6ヵ月毎ぐらいに定期的な耳掃除は行うことも方法です。

外耳道炎 外耳道真菌症

過度の耳掃除や長時間のイヤホン、アレルギー体質によって起こりやすくなり、細菌や真菌(カビ)の感染によって耳の痛み、かゆみ、耳だれ、難聴を起こします。耳だれがある場合には培養検査を行い菌を同定いたします。
軟膏や耳洗浄、抗菌薬内服などによる治療を行いますが、真菌(カビ)による外耳道真菌症の場合にはこまめな診察、治療が必要になります。

急性中耳炎

多くの場合、鼻の炎症が耳管(耳と鼻をつなぐ管)を通して中耳(鼓膜の裏側)に波及することで耳の痛み難聴、耳だれ、発熱などを起こします。

お子さんの場合には耳管が短く、太く、角度が浅いため、中耳炎になりやすいと言われます。特に2歳未満、集団保育に通っているお子さんは中耳炎になりやすいといわれています。中耳炎が治りにくい場合には十分な抗菌薬治療と併せて鼓膜切開、鼓膜チューブ留置を併せて行うこともあります。

成人の方も鼻の炎症から急性中耳炎になることがあります。強い鼻かみ飛行機の離着陸によって耳の痛み、難聴が起こった場合には急性中耳炎になっていることがありますので耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。特にめまい高度の難聴の症状を合併している場合には内耳炎を起こしている可能性があり、早急な治療が必要となります。

滲出性中耳炎

かぜ副鼻腔炎(ちくのう症)、急性中耳炎などのあとに中耳(鼓膜の裏側)に浸出液(液体)がたまる病気です。通常痛みはなく、難聴が唯一の症状です。
子どもに多い病気で、特に小学校に上がるまでのお子さんに多く、年齢が上がるにつれて次第にかかりにくくなります。また耳管機能が悪化する高齢の方もなりやすい病気です。

  • 聞こえが悪い
  • 呼んでも返事をしない
  • テレビのボリュームを上げる

これらの症状があれば滲出性中耳炎の可能性があるため、耳鼻咽喉科での診察が勧められます。

長期にわたって難聴が続くと、ことばの発達に影響が出てくることがあります。また将来的に真珠腫性中耳炎になるリスクがありますので、放置することは勧められません。
中耳を換気してくれる耳管(耳と鼻をつなぐ管)や乳突蜂巣(中耳の裏側にある空洞)の状態が悪いと自然には改善せずに滲出性中耳炎の状態が長く続いてしまいます。鼻のつきあたりにあるアデノイド肥大が強いと耳管機能の悪化により滲出性中耳炎になりやすいと言われています。

耳鼻咽喉科において耳鏡や顕微鏡で鼓膜を確認し、聴力検査やティンパノメトリー(鼓膜の動きの検査)を行うことで診断します。X線検査やCT検査により乳突蜂巣の発育やアデノイド肥大の程度を確認すると、滲出性中耳炎のなりやすさを評価することができます。
まずは鼻の治療を行うことが重要であり、鼻処置、副鼻腔自然口開大処置、ネブライザー療法、内服薬、点鼻薬を組みあわせて治療していきます。しばらく治療を行っても難聴の症状や鼓膜の所見が改善しない場合には、鼓膜切開術や鼓膜チューブ留置術(鼓膜に小さい管をはさみこむ手術)を行うことがあります。

突発性難聴

急に片方の耳が高度の難聴を起こす内耳の病気で、早期の治療が必要になります。めまいを伴うこともあります。さまざまな説はありますがはっきりした原因はわかっていません。40-60歳代の方が多いですが、若い人から高齢の方まで幅広くかかります。

  • 片方の耳が急に聞こえなくなった
  • 耳がつまった感じがする
  • めまいがする

これらの症状があればなるべく早期に(できれば数日以内に)耳鼻咽喉科でステロイド治療を行うことが勧められます。まずは聴力検査とティンパノメトリーを行い、難聴の有無と程度を確認します、少なくとも1週間以内の治療が望ましいといわれています。

糖尿病の方や心臓にご病気をお持ちの方、ステロイドの治療にリスクのある方は入院での加療が必要になることもあります。その場合には適切な医療施設へ紹介いたします。

似たような症状の病気に、低音障害型感音難聴/メニエール病外リンパ瘻聴神経腫瘍などが挙げられます。症状や治療の経過によって適宜鑑別をしていきます。

低音障害型感音難聴
/メニエール病

突発性難聴と同様に急に片方の耳が難聴を起こしますが、高度の難聴というよりも「耳がつまった感覚」「耳に水が入ったような感覚」といった症状が出現し、日によって症状が変化することも多くあります。

  • 耳がつまった感じがする
  • 耳に水が入ったような感じがする
  • 自分の声が響く
  • めまいがする

このような症状がある場合には低音障害型感音難聴/メニエール病の可能性があります。この病気は症状が変動し、繰り返すことも多い病気です。中耳炎がなく、聴力検査で低音部の感音難聴がある場合には低音障害型感音難聴と診断され投薬治療を行いますが、その後も耳の症状を繰り返したりめまいを合併するようであればメニエール病の可能性がでてきます。

低音障害型感音難聴でもメニエール病でも初期の治療は同様で、利尿薬漢方薬などを処方し症状の改善を目指します。
メニエール病の病態は内リンパ水腫(内耳のむくみ)によるものが考えられています。むくみを抑えるためには利尿薬や漢方薬を用いることが多いですが、難聴が高度であったりめまいが出現する場合には一時的にステロイド治療を行うことがあります。

そして低音障害型感音難聴/メニエール病の本質が内リンパ水腫(内耳のむくみ)と考えると、薬と併せて生活習慣の改善も重要と言われています。
具体的には

  • 睡眠を十分にとり、規則正しい生活をする
  • 一日あたり1.5~2リットルの水をこまめに飲む
  • 汗を少しかくぐらいの有酸素運動をできれば毎日30分程度行う

が有効と言われています。この病気は薬の治療と併せて生活習慣の改善を行うことが重要です。低音障害型感音難聴/メニエール病と診断された場合には体の不調が耳の方にきたと思って、まずは生活習慣の見直しを検討してみてください。

外リンパ瘻

ダイビング飛行機くしゃみ重いものを持ち上げた、などにより中耳の圧が上昇し内耳のリンパ液が中耳に漏れだすことによって難聴、めまいが出現する病気です。症状が出現したあとに難聴が進行したり変動したり、めまいがでてくる場合には外リンパ瘻が疑われます。
聴力検査、眼振検査を行い、難聴が認められればまずは突発性難聴に準じてステロイド治療を行われ、そして頭を30度挙げた状態で安静を保つことも行われます。めまいが続いたりする場合には確定診断や治療を行うために手術を行うことがあります。その場合には適切な医療施設へ紹介いたします。

聴神経腫瘍

突発性難聴の鑑別疾患として重要です。突発性難聴と同じように急に片方の耳が高度の難聴を起こすこともありますが、いつから難聴があるかわからない発症時期が不明な片耳の難聴のことも多くあります。めまいが出現することもあります。
診断には聴神経をターゲットにした細かいスライスで撮影した聴神経MRI検査が重要です。聴神経腫瘍が疑われる場合にはMRIの撮影が可能な医療施設へ紹介し精密検査をしていただきます。

良性発作性頭位めまい症

めまいで最も多い病気とされ、寝起きや寝返りなどの頭の位置を変えた時に、回転性めまい(ぐるぐるまわる、ゆれる症状)が数秒から数分続きます。前庭(重力を感知するところ)にある耳石(じせき)がさまざまな原因で剥がれて、耳石が三半規管の中に迷入するとリンパ液の流れに異常が生じてめまいが起こるとされています。耳石が元にあった前庭に戻るとめまいは治ります。

中高年に多いと言われていますが、若い人にも起こる病気です。頭をぶつけたあとに耳石が剥がれて、良性発作性頭位めまい症になる人もいます。
難聴や耳鳴りなどの症状はありません(もし難聴があれば別の病気の可能性があるので、めまい症状のある方はたとえ難聴症状がなくても聴力検査を行います)。

耳鼻咽喉科で赤外線CCDカメラによる眼振検査や聴力検査を行うことで診断していきます。眼振とは、眼球が自分の意思とは無関係にリズミカルに動く眼球運動で、赤外線CCDカメラによって眼球運動を正確に把握することができ、眼振の向きや強さ、持続時間によって、良性発作性頭位めまい症なのか、そしてどのタイプの良性発作性頭位めまい症なのか、それとも別の病気なのか、判断することができるとても重要な検査です。

良性発作性頭位めまい症は通常は運動療法投薬により早くて数日、平均して2週間ほどで改善することが多いですが、良性発作性頭位めまい症のタイプや年齢などによってはめまい症状が長く続く方もおりますので注意が必要です。

前庭神経炎

平衡感覚をつかさどる前庭神経に炎症を起こし、日常生活もままならない程の強いめまいがあり、嘔吐することもあります。難聴や耳鳴りなどの症状はありません(もし難聴があれば別の病気の可能性があるので、めまい症状のある方はたとえ難聴症状がなくても聴力検査を行います)。

発症1-2週間前に風邪症状を認めることがありますが、無い方もいます。ウイルス感染や血流障害などの説がありますが、はっきりとした原因はわかっていません。
赤外線CCDカメラによる眼振検査や聴力検査によって一時診断をすることが可能ですが、一般的にはめまい症状が強いため、入院加療が必要となる例も多くあります。入院が必要と判断した場合には適切な医療施設へ紹介いたします。