アレルギー性鼻炎/花粉症
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状で、ダニやハウスダストなどによる通年性アレルギー性鼻炎と、スギやヒノキなどによる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に分けられます。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりがある場合には耳鼻咽喉科で鼻内の確認をします。鼻腔ポリープや強い鼻中隔彎曲症がある方もいますので、必要に応じて鼻腔ファイバースコープ検査やX線検査、CT検査を行います。慢性副鼻腔炎(ちくのう症)や鼻中隔彎曲症を認める場合には、アレルギー性鼻炎/花粉症と併せてそれらの治療も行っていきます。
症状の経過から、ある程度アレルギー性鼻炎/花粉症を診断することは可能ですが、アレルギーの原因物質を正確に特定することで適切な治療方針を立てることができます。
アレルギー検査について
具体的には採血によるアレルギー検査でアレルギー性鼻炎/花粉症の確定診断を行います。
当院では症状との関連が疑われる項目を13項目まで自由に選択することできます(当院では耳鼻咽喉科が関連する項目を中心としたセットを組んでおりますが、希望の項目があれば適宜追加いたします)。またViewアレルギー39検査による採血では、耳鼻咽喉科関連の吸入系の項目と食物アレルギーの項目併せて39項目を評価することができます。
下記のドロップスクリーンより多少精度がよいですので、採血が苦手ではない方、成人の方にお勧めです。
そして当院では指先一滴の血でアレルギー検査ができる『ドロップスクリーン』と呼ばれる器械を導入しています。項目数は耳鼻咽喉科関連の吸入系の項目と食物アレルギーの項目併せて41項目を評価することができます。ドロップスクリーンでは、アレルギー全体の数値である総IgE値や血清好酸球数が測定できない、多少検査の精度は下がるなどのデメリットはありますが、30-60分程度で結果が出るメリットがあります。
通常の採血が苦手な方、小さいお子さんにはお勧めです。
食物アレルギーの確定診断には「皮膚テスト」や「食物経口負荷試験」が必要であり、今までアレルギー症状がでていない食物の項目が陽性だからといってその食物を除去することはありません。食物アレルギーの診断には十分な問診と適切なアレルギー評価が重要となりますので、食物アレルギーの診断、治療を希望される方は食物アレルギーを専門にしている小児科医の受診をお勧めします。
アレルギー性鼻炎/花粉症の治療について
まずは環境整備が重要です。
ダニやハウスダストなどが通年性アレルギー鼻炎に対してはこまめな掃除が重要です。特に布団や寝具、カーペットは重点的に掃除をし、こまめに換気をしましょう。
スギやヒノキなどの季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に対しては外出時にはマスク、花粉対策用のメガネを使用し、帰宅時には玄関先で衣類や髪についた花粉をはらうと良いでしょう。
次に行うことは薬による治療です。
抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬と呼ばれるアレルギーのお薬の内服とステロイド点鼻薬が有効です。花粉症の場合には予想される飛散開始日より少し前からお薬を開始すると、症状の増悪を防ぐことができます。
舌下免疫療法について
舌下免疫療法は、お薬を使用しても効果が乏しかったり、根本的な治療を希望する方に勧められます。
舌下免疫療法はダニとスギに対して行われます。
舌下免疫療法はアレルギーの検査(採血・ドロップスクリーン)でダニもしくはスギの項目が陽性であることが必要です。他の医療施設で2年以内に行ったアレルギー検査結果がありましたら、その結果をもとに舌下免疫療法を導入することは可能です(再度当院でアレルギー検査を行い、現状を把握することも可能です)。
新規導入は基本的に5-65歳の方になりますが、医師の判断により4歳の方にも導入することがあります。
治療を受けることができない方
- ダニアレルギー/スギ花粉症が検査で証明されていない方
- 4歳未満の方
- コントロールされていない気管支喘息の方
- 近いうちに妊娠を希望されている方、現在妊娠中、授乳中の方
- 癌や免疫系の病気で治療中、または経過観察中の方
- ダニアレルゲン/スギアレルゲンを使った治療や検査でアレルギー症状を起こしたことがある方
- ステロイドの内服薬や注射薬の投与を受けている方
治療を受ける際に注意が必要な方
- 65歳以上の方
- 抜歯や口の中の術後、または口の中に傷や炎症などがある方
- 重症の心疾患、肺疾患及び高血圧症がある方
- 以下のお薬を使用されている方(非選択的β遮断薬、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ)
舌下免疫療法は毎日1回、舌の下に1分ほど置いておく、ダニやスギに慣れさせる治療です。継続することが重要で、最低3年、できれば4-5年継続することで持ち越し効果も期待できるのでお勧めです。効果は半年から1年ほどで出てくることが多いといわれています。1-2割ほどの方は舌下免疫療法の効果がないと言われていますので、2年以上継続しても効果が実感できない方は治療の中止を行うことがあります。
初回は院内で薄い濃度の舌下錠(初期量)を投与し、副反応の有無を確認するために投与後30分ほど院内にいていただく必要があります。
問題なければ1週間分、薄い濃度の舌下錠(初期量)を処方し、1週間以内に再診していただきます。
1週間のなかで副反応が強くなければ、通常の濃度の舌下錠(維持量)を1ヵ月程度処方します。そして通常の濃度の舌下錠(維持量)でも問題なければ引き続き1ヵ月毎に再診し、舌下錠を継続していきます。
舌下免疫療法のスケジュール
初回 | 院内で薄い濃度の舌下錠(初期量) >問題なければ1週間分薄い濃度の舌下錠(初期量)処方 |
---|---|
2回目 (1週間以内) |
通常の濃度の舌下錠(維持量)を1カ月処方 |
3回目以降 (1ヵ月後) |
通常の濃度の舌下錠(維持量)を継続処方 |
- ダニは1年中いつから始めても大丈夫です。
- スギは花粉症が飛散していない6-11月に開始する必要があります。
- ダニ、スギの両方とも舌下免疫療法を始める方は開始時期を1-2ヵ月ほどずらす必要があります。
- どちらを最初に始めても構いません。
- スギの舌下免疫療法は2025年7月現在、舌下錠(初期量)の流通が滞っており、新規開始が難しい可能性があります。
舌下免疫療法は日本で10年ほど前から導入されており、高い有効性が示されております。継続することが重要な治療でありますが、効果が実感できる人は多くいらっしゃいます。アレルギー性鼻炎やスギ花粉症でお困りの方はぜひ検討してみてください。
副鼻腔炎(ちくのう症)
鼻の周囲にある空洞を副鼻腔と呼びますが、その空洞に炎症を起こすと
- 色のついた鼻水(膿性鼻汁)
- 鼻づまり
- 鼻水がのどに下がる(後鼻漏)
- においがわからない(嗅覚障害)
- 顔面(頬、目の上)が痛い
などの症状が出現し、副鼻腔炎を発症します。
- 発症から4週間以内…急性副鼻腔炎
- 発症から3ヵ月以上続く…慢性副鼻腔炎
と定義されていますが、症状が強い場合にはまずは急性副鼻腔炎として治療を行うことが多くあります。
まずはCT検査やX線検査で副鼻腔に陰影があること、そして鼻腔ファイバースコープ検査で膿性鼻汁を認めることで診断していきます。
症状が強い場合にはまずは抗菌薬治療を行いますが、併せて鼻処置、副鼻腔自然口開大処置、ネブライザー療法を行うとさらなる効果が望めます。
症状や所見によって膿性鼻汁の培養検査を行うことがあります。
3ヵ月以上膿性鼻汁、後鼻漏、嗅覚障害などが続いていて、CT、鼻腔ファイバースコープ検査で慢性副鼻腔炎と診断された場合にはまずはマクロライド療法と呼ばれる内服治療を3ヵ月程度行います。
マクロライド療法とは通常の半分の量のマクロライド系抗菌薬を3ヵ月程度継続する治療法で、慢性副鼻腔炎に対して一定の効果が期待される治療法です。
症状や鼻の所見によりますが、3ヵ月経過したのちに再度CT検査を行い副鼻腔炎が改善しているか判定いたします。
症状やCT所見が不変であったり改善が乏しい場合には副鼻腔手術が選択肢になります。手術が勧められる場合、手術を希望される場合には適切な医療施設へご紹介いたします。
好酸球性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎の中でも再発しやすいタイプの副鼻腔炎で、難病にも指定されています。鼻の中の嗅裂とよばれる部分に鼻腔ポリープ(鼻茸/はなたけ)が出現しやすく、嗅覚障害をきたしやすいと言われています。
好酸球性副鼻腔炎はマクロライド療法の効果が乏しい病気です。診断にはCT検査、鼻腔ファイバースコープ検査、採血検査が必要となりますが、確定診断を行うためには鼻腔ポリープの組織を一部採取して病理組織検査によって好酸球数を測定する必要があります。
十分な技術を持った術者によって手術を行うことが望ましい病気で、術後のしっかりしたフォローも手術と同様に大切になります。
手術が勧められる場合、手術を希望される場合には鼻の手術に精通した適切な医療施設へご紹介いたします。
その他の副鼻腔疾患
副鼻腔炎(ちくのう症)、好酸球性副鼻腔炎以外にも歯性上顎洞炎、副鼻腔真菌症、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、副鼻腔腫瘍、副鼻腔癌などがあります。いずれの病気もCT検査、鼻腔ファイバースコープ検査、採血検査によって一時診断を行うことが可能です。確定診断は組織を一部採取する病理組織検査や手術になりますが、手術が勧められる場合、手術を希望される場合には鼻の手術に精通した適切な医療施設へご紹介いたします。
鼻中隔彎曲症(びちゅうかく
わんきょくしょう)
鼻の中を右と左に分けている仕切りを鼻中隔と呼びます。顔面の成長に伴いほとんどの人はどちらかに彎曲しているといわれていますが、鼻中隔の彎曲が強くても鼻づまりの症状がない人も多くいます。
鼻中隔彎曲があり、鼻づまりの症状との関連が強く疑われる場合には鼻中隔矯正術(びちゅうかくきょうせいじゅつ)を行うことがあります。また最近では鼻中隔の中でも手前の部分が彎曲している方に対して前彎矯正術(ぜんわんきょうせいじゅつ)を施行する施設も増えています。
手術が勧められる場合、手術を希望される場合には鼻の手術に精通した適切な医療施設へご紹介いたします。
鼻出血
鼻出血の多くはキーゼルバッハ部位と呼ばれる鼻中隔の前端部の毛細血管が集まっている部分から出血します。
5-10分ほど小鼻を圧迫すると鼻出血の勢いが減り、止血していきます。なるべくティッシュはつめない方がよいと言われております。
また血を飲み込まないように、小鼻を圧迫しながら少し下を向いた姿勢を保つほうがよいと考えます。
頻回に鼻出血を繰り返す場合には小さいガーゼを数枚つめて圧迫止血を行ったり、電気凝固による止血術を行うことがあります。
鼻腔後方からの出血の場合には適切に小鼻を圧迫しても多量の鼻出血がのどに下がってきます。その場合には後方までしっかりとガーゼを挿入し圧迫止血を行う必要がありますが、ときに全身麻酔下で蝶口蓋動脈と呼ばれる部分を止血処置しないと止まらない鼻出血があります。
そのような鼻腔後方からの出血がある場合には適切な医療施設へご紹介いたします。
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